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担当とハプバーで
第6章 墓まで連れ添う秘密たち
メッセージを送った二十時間後。
インテイスの入ったビルの自販機の前で立っていると、五分もせずに目当ての声がした。
「店開くの二十時だろ。待ち合わせ早いんだよ」
夜の喧騒の中、その長身だけにピントが合う。
黒いジーンズにオーバーサイズの緑のアウター、下ろした髪に白いキャップ。
「ごめんね、知ってたの」
ホストクラブでのシックなスタイルと違って、遊び心いっぱいの私服にニヤけそうになる。
ハヤテは降参とばかりに目をぐるりと回して、大仰に両手を広げた。
「証拠対策に、メッセージじゃなくてスタンプって指示したつもりなんだけど。言うこと聞かないな」
「私だって調べものくらいするよ。ああいうバーで二回連続で同じ人とプレイするのはスタッフにチェックされるって。二十時だったら、来る気無かったんじゃないの」
「これから行く場所に即移動するつもりだった。ついてきて」
顎で進路をクイッと示してから、長い足が歩き出すのを追いかける。
大通りに出ると手を挙げてタクシーを止めて、さっさと乗り込んでしまう。
運転手に会釈してから後に続いた。
「ご乗車ありがとうございます。どちらまで」
「市川塩浜駅北口。高速使ってください」
「承知いたしました。シートベルトにご協力お願いいたします」
市川塩浜?
ベルトを締めるカチンという音がふたつ響く。
ハヤテの方に身を乗り出して、小声で尋ねた。
「なんで、そんなに遠くに」
ハヤテはキャップを外して、腕に着けていたヘアゴムで緩く髪をまとめた。
流れていく夜景をバックに、こちらをじっと見る。
「そこよりもっと遠くから通ってんだろ。帰りもタクシー呼ぶから、今日は出来るだけ長く一緒にいよう……って思ってんだけど」
時が止まったような静寂から、鈍感な心臓が遅れて騒ぎだす。
わざわざ、私の家の近くに移動して。
ギリギリまで一緒にって。
ダメだよ。
舞い上がっちゃうよ、そんなの。
「す、すごい嬉しい……けど、いいの?」
「あんま行かないけど眺めのいいホテル予約したから。営業メール返す間に何するか考えといて」
サラリとすごいことを言っておいて、黙々と携帯をいじり始める。
なんで、予約……。
私が時間早めたからって。
それだけで、計画まで変えて。
ダメだ。
顔が熱い。
まだお酒も飲んでないのに。