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担当とハプバーで
第6章 墓まで連れ添う秘密たち
信号でタクシーが止まるたびに、窓の反射越しにハヤテの表情を見てしまう。
一人一人に手打ちでメッセージを打ち込みながら、時々文章を悩むように下唇を噛む。
何十人に毎日送っているんだろう。
真剣な眼差しに声をかける気も起きず、エンジン音と街の雑音をぼんやりと聞く。
仕事は十五分早く上がってきた。
朝から気が気じゃなかった。
もう一度会える。
それだけで生きてる意味がある気がした。
土曜の一件から祥里とはほとんど口を利いてない。
ただいつも通りに家事を済ませて、清潔を保って。
でも、何かが終わってしまったと思う。
きっと次に夜を誘うことはもうない。
祥里から来ることはここ二年ほぼなかったから、私が諦めてしまえばもう本当になくなるはず。
ハヤテが足を組み直す音に、そんな思考も吹き飛ぶ。
いつもの革靴と違って、ランニングシューズだ。
普段どうやって鍛えているんだろう。
皇居の周りを走ってると言われたって納得する。
高速に乗り、速度が増す。
段々と近づいてくる目的地がホテルということに、下腹部が緊張と期待で痛んでくる。
生理が来週予定でよかった。
本当に良かった。
もしその期間に重なっていたとしたら、どうしていたんだろう。
ふと考えてしまう。
これからは。
次の約束がもしも生まれて、それが予定週間だったら。
我ながら呆れる。
ただ断ればいいだけの架空の話。
だから今日が永遠ならいいのに。
祥里が帰ってくるいつもの時間、二十三時半までに帰宅するとしたら、たったの四時間程度。
今だけ時間がゆっくり流れればいいのに。
すでに帰路を考えて泣きそうになる。
視界の端から光が消えたと思うと、ハヤテが携帯の画面を消してアウターのポケットにしまった。
それから外を見て、もう有明か、と呟いた。
この海沿いの景色は独特だ。
大きな建物が広い間隔でそびえて距離感が掴めない。
街灯の光は力強く、夜空の広さに海が開けていることを知らされる。
新木場、葛西と大きな公園の森を眺めながら進む。
「もうちょい遅かったら花火見れたな」
ハヤテの言葉に、夢の国の横を走っているの気づいた。
パレードかあ。
最後に見たのは学生の頃だっけ。
祥里は興味がないからデートで行くことはなかった。
ハヤテは、何人と、あの花火を見たんだろう。