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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第8章 女久美 54歳
数分後、私たちは人通りの多い路(みち)から裏通りに入り
いかにも連れ込みホテルという外観のラブホの一室にいました。
「あなたには困ったもんだわ…
あんな往来で抱かせてくれだなんて大きな声をあげるんですもの」
「すいません…必死だったものだから…
もう貴女に会えないのかと思うと
何とか自分の想いを遂げたくて…」
勢いでラブホに連れ込まれた私ですが
こういう場所に来るのは30年ぶりなので
なんだか落ち着かなくてドキドキしていました。
「シャワー…浴びますか?…」
それだけ言うのがやっとでした。
心臓が飛び出そうです。
まさか、この年齢になって
見ず知らずの男とゆきずりの関係を結ぼうとしているのですから当然です。
シャワーという言葉に
自分で私をラブホに連れ込んだにも関わらず
彼は顔を真っ赤にしてソファーに座って固まっていました。
『あら…?意外と初心(うぶ)なんじゃないの』
そんな彼を私は可愛くなってきてしまったんです。
「そんなに固くならないでよ
最初で最後だから素敵な時間にしましょうか?」
冷蔵庫からビールを取り出してコップに注いであげると、両手で大事そうにコップを持って一気に飲み干しました。
「私もいただくわね」
同じようにコップに注いだビールを一気に飲み干します。
私を好きだから抱きたいだなんて
往来で宣言した割には
いざ、こうして二人っきりになると怖じ気づいちゃてさ…
もしかしたら何もせずに一日が終わるかもと思った私は彼に思い出作りをしてあげるために、こちらから仕掛けました。