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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第8章 女久美 54歳

「本当の事を言います
僕、社会人になって、あの通勤電車を利用することになったんですけど、その時、一目見て貴女を好きになったんです!」

「ちょっと待ってよ!本当に私なの?
誰かと間違っていない?」

「いいえ、間違いなく貴女です」

「言っておくけど、私は50過ぎのおばさんよ?
熟女好きにも程があるわ」

「年齢とか関係ないでしょ
好きになってしまったものは仕方ないですから」

こんなハンサムに面と向かって好きと言われて
年甲斐もなく胸がときめきました。

「そう…そんなことを言ってくれるのは嬉しいけど…実は私、定年したから、もうあの電車に乗ることはないわ」

だから、これでおさらばね

痴漢をしたことは黙っていてあげるから
年相応の女性を口説きなさい。

私はテーブルの伝票を手にすると
彼にサヨナラも告げずに席を立ちました。

「待ってください!!」

お店をでた私を彼は大股で追いかけてきます。

「しつこいわね!
これ以上付きまとうと本当に警察に連れていきますよ!」

「もう会えないのなら…
せめて、最後に貴女を抱かせてください!」

駅の近くの路地はそれなりに人通りがあります。
なのに彼ったら恥ずかしげもなく私を求めてきたんです。

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