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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第14章 裕美 30歳
「あら、君?どうしたの?
具合がわるくなっちゃった?」
私の問いかけに無視して
その生徒はおもむろにカーテンを開けて
処置室のベッドに潜り込みました。
すぐその後に体育の穂積先生が駆け込んできて
「大越先生!うちのクラスの井坂が来ませんでしたか?」
その血相を変えた穂積先生の顔を見て
何か訳ありなのねと
私は瞬時に気を利かせて
「いいえ、どなたも来られませんでしたよ」と
咄嗟に誤魔化してあげた。
「そうですか…確かこっちに逃げ出したと思ったんですけどねえ」
まあ、いいや、もし男子生徒を見かけたら
俺の方へ連絡してください!
早口でそう言うと
「くそ~!井坂め、どこへ逃げやがった!」と
まるで刑事が犯人を追うような口調で保健室を出ていった。
「もう隠れなくて大丈夫よ」
そのように言ってあげても
多分、井坂くんという生徒は
毛布を頭から被ってベッドで丸まっていました。
「何があったの?
良かったら先生に理由を教えて欲しいな」
私はベッドに腰かけて
彼の背中を優しく撫でながら訳を知りたいと思いました。
「穂積の野郎、僕を痴漢に仕立てようとしているんだ」
「えっ?痴漢?」
聞き捨てならぬことを聞いてしまったと
私はちょっぴり後悔しました。