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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第15章 朝子 50歳

「本日の勉強、終わりました」

家庭教師の鈴村安奈さんが息子を引き連れて二階の息子の部屋から降りてきた。

「まあまあ、お疲れさまでした」

私は彼女のためにコーヒーとロールケーキをテーブルに用意した。

「正司、あんたもケーキを食べる?」

「いや、いい。俺、今、ダイエット中なんだよね
それよか、勉強も終わったし晃んとこへ遊びに行ってもいいよな?」

あんまり遅くならないでね
私は頑張った息子の褒美として遊びに行くことを許可しました。

「じゃあ、先生…二人でいただきましょ」

私は家庭教師の安奈さんと向かい合ってテーブルに座った。

私、村野朝子は50歳の主婦です。
ありふれた名前と半世紀もお付き合いしています。
朝に産まれたから朝子…
なんとも単純な理由で私は平凡な名前を付けられた。

夫とはお見合いで結ばれました。
お互いに三十路になってからの晩婚です。
そんな関係で精子と卵子が古かったせいか
授かった息子は勉強もできずに甘やかして育ててしまいました。

高校生になってからは
勉強嫌いに拍車がかかってしまい、
これではいけないと、思いきって今の安奈さんに家庭教師をお願いしたところ、
教え方が上手なのか、息子の成績もアップして
先日の三者面談では担任の先生から「この調子なら志望校も大丈夫そうです」と太鼓判をいただいたのです。

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