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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第17章 咲恵 37歳
時計の針がてっぺんで重なりあう深夜の事です。
けたたましくナースコールが響き渡りました。
部屋番号は306号室…
例の高校生の男の子です。
「わたし、行きます」
復職したとはいえ、新人ナースのようなものですから、私は率先して306号室に駆けつけました。
「大江さ~ん、どうかされましたか?」
優しく声を掛けると
「なんだよ!おばさんナースかよ!
もっと若い女性のナースが来てくれると思ったんだけどなあ」
カチンときましたけど、
ミーティングで看護師長から「笑顔で対処しましょうね」と言付けられているので
「ごめんなさいね~、おばさんだけど我慢してね」と愛想よく笑顔で接しました。
「痒いんだよ」
高校生の彼はぶっきらぼうにそういいました。
「あら、どこが痒いのかしら?」
「背中!」
はいはい、孫の手の役割をしろと言うのね
私は彼の要望どおりに背中を掻いてあげました。
「はい、もうお仕舞いよ
夜も遅いんだからしっかり寝てくださいね」
そういい残して私は病室を後にしました。
すると、五分後に再びのナースコールです。
「どうしたのかしら?」
笑顔を絶やさずに尋ねてあげると
「背中、また痒くなったんだよ
おばさんだけど、あんた背中を掻くのが上手だから呼び出しちゃったよ」
そんなわがままなことを言うんです。