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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第19章 樹理 32歳
その日も絵画教室で絵を描く日でした。
少し遅刻ぎみに教室に飛び込むと
何だかザワザワしていて落ち着きがありませんでした。
「どうかなさいましたか?」
私は思案に暮れている絵画の先生にお声を掛けました。
「あ、山口さん…どうもこうもじゃありませんよ
予定していたモデルの女の子が急病だとかで
お休みされることになったんです」
まあ、そういうことでしたの?
それなら今日は予定を変更して風景画でも描きに外出しませんこと?
お天気も良いですし、生徒さんはお年を召された方が多いので散歩がてらに良いんじゃありません?
私はそのように提案してみましたが
「いえ、予定を変えてしまうと
後々のスケジュールに支障がでます
本日は人物デッサンをすると決めてあるので
何とか予定どおり実施したいんです」
A型の先生は融通が利きません。
きっと先生の頭の中には年間スケジュールが
キッチリと決めてあるのでしょう。
「仕方ありません、私がヌードモデルを引き受けます」
絵画教室の緒方先生は
意を決して裸になると仰ってくれましたが、
生徒さん達からはブーイングの嵐です。
「男の裸なんて描きたくはないよ」
「そうよ、デッサンどころか目のやり場に困ってしまうわ」
男性の方は単純に男の裸なんて見たくないと喚きたて、女性の方は恥じらいを覚えてしまうと
男性のヌードは却下されました。