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第19章 樹理　32歳

「困りましたねえ…
アートには男性も女性も関係ないんですが…」

「緒方先生、ひとつ提案があります」

私は、ある考えを提案してみました。
それは生徒さんの中から女性陣でくじ引きをして
どなたかにモデルをして貰うというものです。

気乗りしない女性の方もおられましたが
こうしていても時間ばかりが過ぎて筆を持つ時間がどんどんと少なくなってしまいます。

気乗りしない方を何とか説得して
くじ引きをして貰いました。

だけども、こういうくじ引きって
言い出しっぺに当たってしまうものです。
当然、くじ引きの結果は私に白羽の矢が立ってしまいました。

「樹理さんなら申し分ない。
お肌も艶々だろうし、メリハリのある体だからこちらとしても描くのに気合いが入りますよ」

「そうよ、任せておいて綺麗に描いてあげるから」

生徒さんたちは自分がモデルをしなくて済んだので
やたらと饒舌でした。

「では、約束どおり樹理さん、脱衣をお願いします」

緒方先生もやけに嬉しそうに
教室の隅っこの脱衣室を指差した。

「仕方ないわね…言い出したのは自分だし…」

恥ずかしいという気持ちは特にありませんでした。
これも芸術の為なのだからと、私は脱衣室に飛び込みました。

ただ…
裸を誰かに見せるなんて思いもしなかったので
アンダーヘアのお手入れが行き届いていないのだけが情けなかったのです。