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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第19章 樹理 32歳

二時間のモデル体験が終わった頃には
足がガクガクでした。
けっこう立位って疲れるんです。
これなら椅子に座ったりとか寝転ぶポーズにしてほしかったと、パンパンになったふくらはぎを揉みながら後悔しました。

生徒さんたちがお帰りになって
緒方先生と二人っきりになると
「お疲れさまでした」とコーヒーを煎れてくれました。

「モデルってこんなに疲れるとは思いませんでしたわ」

「そうでしょ?僕も学生時代に経験がありますけど、辛いもんですよね」

「その時もヌードを?」

「ええ、でも、うちの生徒さんみたいに真面目じゃなかったので絵筆で男性のシンボルを撫でられたり…乳首に色を塗られたりさんざんでしたよ」

私の労をねぎらうためか、
嘘か誠かわからないけれど、そんな笑い話をしてくれました。

「先生、お約束ですよ」

時間が勿体ないわと
私は裸のまま自分の席に座ってキャンバスを用意した。

「そうか、僕がヌードモデルになるって約束だったよな」

そう言うと緒方先生は
脱衣室を使わずにその場で服を脱ぎ始めた。

「まあ!先生ったら…恥ずかしくないんですか?」

「恥ずかしくないよ、アートのためなら何だってするよ」

パンツを脱ぎ捨てた先生を見て
私、ちょとだけ赤面しちゃいました。


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