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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第20章 知世 35歳
「お客さま、失礼ですがお会計のお済みでない商品があるのではないですか?」
言葉使いは丁寧ですけど
その目は鬼の首を取ったように勝ち誇っていました。
「申し訳ございませんが
ちょっと事務所までお越し願えませんか?」
無視をして立ち去ろうと思いましたが
そのおじさんはガシッと私の手首を掴んで離してくれません。
引きずられようにして
私はお店の奥の小部屋に連れ込まれてしまいました。
そこには窓もなく倉庫のような部屋で
照明も薄暗くて取調室を連想させました。
「困るんですよねえ、こんなことをされちゃぁ」
先ほどまでとは打って変わって
さながら犯人を問い詰めるような刑事さんのようです。
「何のことでしょうか?」
私は何もやっていないとシラを切るつもりでした。
「バッグの中、見せてもらうよ」
強引にバッグを私の手から奪って
テーブルに中身をぶちまけた。
ゴトンと音がしてコーヒー缶が一本転がります。
「これ、万引きしたよね?」
「いえ、これ…自販機で買ったんです…」
「こっちが下でに出りゃいい気になりやがって!」
おじさんは私の二の腕を痛いほど鷲掴みました。
「やめてください!」
「まあ、コーヒーの一本ぐらい俺が奢ってやってもいいけどさぁ」
許して欲しけりゃ
それなりに見返りをもらわないとな
おじさんはそう言って私の胸元に手を差し込んできました。