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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第20章 知世 35歳
「旦那さんには知られたくはないんですよね?」
怯える私に見せつけるように、
おじさんはニヤニヤ笑いながら
バッグから出てきた私の免許証を目の前に置いた。
「へえ~…知世さんって言うのかい。
とりあえず、これをコピーさせてもらいますよ」
『うそ…やだっ!…何でこうなっちゃうわけ?
誰にも見られていないと思っていたのに…』
私がなぜ万引きをやり始めたのか
きっかけなんてわからない。
もしかしたら軽い気分転換のつもりだったのかもしれないし、ストレスの発散だったのかもしれない。
あるいは決してバレてはいけないという
スリルが興奮させたのかもしれない。
「許してください、おねがい…っ!」
こんなことするんじゃなかった、
そう心から悔やんでも後の祭りで
状況が好転するはずはないが
それでもそう思わずには居られなかった。
「知世さんでしたね…家は…ほう、けっこう遠くからお越しなんですね」
おじさんは自分を尾崎ですと名乗った。
見た目からわかるように58歳だと私より随分年上でした。
彼は、この店の店長で脂ぎった真ん丸の顔をしていた。
その丸い顔から爬虫類のような目つきで私を見つめる。
不気味で陰湿な雰囲気を醸し出していました。