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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第24章 早苗 33歳
やがて男は私を抱き締めるとキスをしてきました。
男のキスから逃げようとしない自分を、
これも全て不倫を夫にバラさせない為よと
私はそんな風に自分自身を納得させようとした。
それに、意味は違うが夫がそうするように命じたのも同然だわと私はそうも感じていた。
わかったわ、あなた…
もう少しだけこの男に好きにさせるわ…
そうすれば二人の婚姻生活も波風を立てずに済むんですものね。
誰にも助けを求める事の出来ない状況を受け止めながら、
私は瞳を閉じ、彼に身を任せた。
無抵抗な人妻の私に対し、
男は力を緩め、背後からそっと私の体を抱き寄せた。
「どんな気分ですか、奥さん?」
名前を知っているくせに、わざと私を「奥さん」と呼ぶ男…
きっと、彼なりにアバンチュールを楽しんでいるのでしょう
「別に…どんな気分でもないわよ…」
「ご主人に秘密をバラされないためとは言え、
こんなふうに見ず知らずの男に悪戯されるのは、たまらないでしょう?」
恋人のような柔らかなキスを、
彼は私の唇に与え続けた。
なかなか離れようとしない男に対し、
私は苦しげに声を漏らす。
「ねえ、もういいでしょう?…」
私が言葉を発するために開かれた唇に、
男が巧みに舌先を滑り込ませる。
私の舌がそれに触れた瞬間、
二人は同時に濃厚な吐息を漏らしたのと同時にエレベーターの扉が開いた。