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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第27章 小雪 41歳
「い、いえ…いつもは…インナーカップがある服装なんですけど…つい、うっかりカップなしのキャミソールを着ていたみたいで…」
「そうですか…僕はまたてっきり誘惑されているのかと思いましたよ」
そんなことを言いながら
体を密着させてくるんです。
逃げ場のないエレベーター内ですから
どうすることも出来ずに私は固まってしまいました。
バチンッ---
やけにイヤな音がしてガクンっとエレベーターが停止しました。
『…え?』
電気が突然消え、非常灯が灯り、
目的の階に着く前に静かに動きを止めた二人を乗せるエレベーター…
「あちゃ~、ついにイカれちゃったか?」
このマンション、築年数がかなりのもので
備品はおろかエレベーターもオンボロなんです。
彼は慌てる素振りも見せずに
落ち着いて目の前の非常通報のボタンを押してくれました。
『はい?どうしました?』
インターホンからのんびりして眠たそうな管理人さんの声が反ってきました。
「エレベーターが止まってしまって…」
『そうですか、業者に連絡しますから
暫くお待ちください』
そう言って唐突にインターホンが切れました。
「どうせすぐ動くんじゃないかなあ?」
同じエレベーターに閉じ込められている山上さんは、焦る私とは正反対に顔色一つ変えないで落ち着いていた。
「そうですよね、待つしかないですもんね…」
不謹慎かもしれないけれど、
何だか山上さんったら私と密室で二人っきりになれたことをワクワクしている感じでした。
隣に立つ山上さんの方をチラリと見ると、
私の視線に気付いたのか、彼と視線が合いました。
ゆっくりと交わる視線。
「どうしました?」
「あ、いえ、何でもないです!」
「なんだ~、てっきり僕に相手でもして欲しいのかなと?」
ゆっくり彼は私へと歩み寄り、
二人の距離は無くなっていきました。
非常灯の赤い明かりがなんとなく淫靡な雰囲気を作っていました。