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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第28章 葉月 54歳
毎年、斎藤さまと酒を酌み交わすのが夫の楽しみでしたし、斎藤さまもそれを大層喜んでくださっていました。
今年は生憎と夫が病床に伏せていますので
出来れば私が夫に代わって斎藤さまのお相手をしてあげようと思いました。
予定どおり、三日後に斎藤さまがお見えになりました。
「聞いたところによると、旦那さん、倒れたんだって?」
「ええ、でも命に別状はなく
斎藤さまが来られると知って残念がっていましたわ」
「そうかい…私も寂しいよ
なんてたって旦那と飲み明かすのがここに来る楽しみの一つだったからねえ」
「ご贔屓の斎藤さまですもの
良ければ今夜、私が晩酌のお相手をさせていただきますわ」
「そうかい?いやぁ嬉しいな
女将と差し向かいで飲めるというのも
贔屓客の特権だね」
斎藤さまは、いつにもまして上機嫌で客室に入られました。
夜も更けて
私が斎藤さまのお部屋に訪ねると
「待っていたよ」と私を快く迎え入れてくれました。
私は斎藤さまの隣に座ってお酌をして差し上げた。
「旦那の代わりなんだから
今夜はとことん付き合ってもらうよ」
そう言って斎藤さまは私に猪口を差し出しました。
酒豪の斎藤さまについていけず
私はほろ酔いを越してかなりベロンベロンになってしまいました。