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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第29章 安祐美 27歳
タクシーをつかまえて私たちは市街に行きました。
片田舎の地元にはラブホテルと呼べる洒落たものなどなかったからです。
「この辺でいいですか?」
ラブホテルまでと言うのが恥ずかしいので
私たち二人は繁華街のど真ん中でタクシーを降りた。
浴衣姿の私は通りを歩く人たちに物珍しくジロジロと見られてしまいました。
「やだ…着替えてくればよかったかしら…」
「いや、俺はその方が興奮するけどな」
洋平の言葉に嘘はないようで
早くもハアハアと荒い息をしていました。
路地裏に一軒だけ古びたラブホテルがありました。
私たちはそそくさとその建物に吸い込まれるように入った。
初めてのラブホテルに洋平はテーマパークのアトラクションに足を踏み入れたようにキョロキョロしています。
「洋平、どの部屋がいい?」
「どこでも…」
室内のパネルを見ただけで洋平ったら股間を膨らませているんですから可笑しい。
「じゃあ…私はピンクがいいからこの部屋ね」
私たちは案内灯に導かれて選んだ部屋に急ぎました。
「デカいベッドだな…」
部屋に足を踏み入れて、一気に緊張しだしたのか
洋平の声は震えていました。
「ね、どうする?お風呂に入る?
それともシャワーでいいかしら?」
「い、一緒に…入ってくれるんなら…お風呂…」
童貞の洋平は私に襲いかかるでもなく
ソファーにちょこんと体を小さくして座った。
『私が洋平の初めての女になるのね…』
そう思うと、こちらまでドキドキしてきちゃいました。