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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第34章 姫華 66歳

渡りに船とはまさにこの事です

「本当?うわぁ~、助かりますぅ」

私は彼の車に乗り込んで送っていただくことにしました。

「姫華さんって、元々は歌手だったんですよね?」

「ええ、全然売れませんでしたけど」

「でも、CDとか出していたんでしょ?
すごいなあ」

「すごくなんかないわよ
今じゃ全部廃盤になっているし
カラオケにも配信されてないんですから」

「ねえ、アカペラでいいから歌を聴かせてよ」

「今ここで?」

「やっぱりマイクとエコーがある方がいいですよね?」

「カラオケ」という看板が目についたので飛び込んでくれましたが、生憎と満室でした。

「ねえ、カラオケルームでなくてもいいんでしょ?
僕、そういう設備のあるところを知ってます」

そこへ行きましょう!ね、そうしましょう!!と
半ば強引に連れていかれたのがラブホテルでした。

「えっ?ここって…」

「心配しないで、そういうことが目的じゃないですから、カラオケマイクも部屋に備えてあるんですよ」

私が尻込みするにも関わらず
彼ったら私を拉致するかのように部屋に連れ込んだんです。

久しぶりのラブホテル…
そういうことが目的ではないとわかっていてもドキドキしてしまいます。
二十年ぶりかしら…こんなところへ二度と足を踏み入れる事はないと思っていたのに…

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