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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第34章 姫華 66歳

たぶん聴いたこともない歌なのに
彼はアカペラで歌う私をニコニコしながら聴いてくれました。

「お疲れさまでした、コーヒーでもどうぞ」

彼が淹れてくれたインスタントコーヒー受けとるときに手が滑って溢してしまいました。

「大変だ!染み抜きしますから脱いでください」

「えっ?」

「職業柄、お年寄りがジュースとかコーヒーを溢すので染み抜き剤を持っているんです」

さあ、早く!と急かされて
私は衣装を脱がされてしまいました。

下着姿はさすがに恥ずかしいので
ホテルの部屋着を着ましたが
何だかミニのワンピースを着てるみたいで
これはこれで恥ずかしい…

彼はてきぱきと染み抜きをしてくれた。
「乾くまでのんびりしていきましょう」
私も別に急いで帰る必要もなかったので
彼の提案に賛成しました。

「こういうこところにはよく来るの?」

「彼女がいる頃にはね…今はフリーなので来ることもありませんが…」

「そう…いい男なのに見る目がないのね」

「いい男…ですか?」

「ええ、背も高いし、イケメンだし…
私が若ければアタックしたいぐらいよ」

「じゃあ…アタックしてください!」

「えっ?」

「僕、姫華さんみたいな女性が好みなんです!!」

早口で捲し立てると、鎖が外れた野獣のように私に抱きついてきました。

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