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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第39章 美登利 30歳

「大変だ!!血が出てるじゃないですか!」

青年は「僕の部屋、すぐそこなんです。寄っていってください、消毒と治療をさせてください」と
頭を下げてくれるのですが、
「大丈夫よ、こんな傷なんてハンカチで押さえていればなんでもないわ」と、私は遠慮したんです。

それでも青年は「そういうわけにもいきません!
僕の前方不注意なんですから、是非、治療をさせてください!」と引き下がってくれないものですから
「それじゃあ…消毒だけお願いします」と
私は彼の好意に甘えることにしました。

彼が「部屋はすぐそこなんです」と言ったとおりに
ホントに目と鼻の先でした。

大学生でしょうか、
オンボロアパートで四畳半一部屋のほんとに下宿先という感じでした。

「散らかっていますけど…どうぞ遠慮なさらずに」

「散らかっている」と軽い言葉で形容しましたが
とてもじゃないですけど散らかっているどころではありませんでした。
だって座るにもどこに座っていいのかさえわからない有り様でしたし。

「すいません!すぐ片付けますから!」

そう言って彼は乱雑に散らかっている雑誌を慌てて部屋の片隅に積み上げてくれたのですが
急ぎすぎてバランスが悪かったのでしょう
バサバサと雑誌は崩れ落ちてきて
尚更に部屋が散らかってしまいました。

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