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最愛の人
第39章 悲劇
「もう気をやったか」
『本当に口だけの方です。
海斗様、ずいぶん緩いですね』
「………緩いか?」
『はい。かなり』
「おまえ、顔色を変えもしないで、相当キレてるだろう?」
『当たり前です。
愛莉は私達の家族、とも言える存在です。
本当ならお腹を擦りながら、皆と笑い合っているはずだったんです。
それを、こんな奴に!』
「すまない。
俺がもっと愛莉を見ていれば…
今考えると、愛莉はずっと助けを求めていた。
体を重ねても、どこかに行ってしまいそうで…
愛莉は今どこにいるんだろうな。
辛い思いをしていなければいいんだが……
この手に連れ戻したら、二度と離さない。
愛莉を一人では泣かせたりしない」
『そうですね。
そうしてあげてください。
そろそろ起こしますか?』
「そうしよう」
俺たちはここでも間違った。
この親子を散々痛め付けた一週間。
愛莉を見つけるどころか、手掛かりさえ見つからない。
また、一週間。
また、一週間。
流石におかしいだろう。
愛莉が隠れていたとして、一人でここまで隠れきれるか?
どう考えても無理だ。