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君と偽りのドライブに
第1章 prologue:幼馴染み
真面目で物静か、というのが、彼を見た大半の人が抱く印象だろうと思う。
そして、性格もその見た目を裏切らない。
小学生来の幼馴染みの私から見れば、多少バカ真面目に過ぎるところもあるし、もうちょっと遊んだらいいのにということもある。
少し長めの黒髪は、癖毛をそのまま放置していて、黒縁眼鏡も相俟って重たい印象がする。
口数も多いほうではないし、嘘をつくのは下手だった。
けれど、まあ、基本的にはその真面目さは良い方向に作用しているし、悪いやつじゃない。
浮いた話は一つも聞いたことがなかった。
だから私は、彼を恋愛対象から外していた。
彼は良い幼馴染みで、一生の友人だった――はずなのに。
私は彼の一言に、
「有紗、今、彼氏いる?」
そんな在り来りの、あからさまな、フラグ然とした台詞に、胸が弾んだ自分を、否定することができなかった。
「いないよ」
平静を保ったフリで答える私が次に聞いた言葉は、しかし、予想していたものとは違った。
「今週末……あいてる?」
彼――哲弥は、赤い顔で俯いたのだった。