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人妻の愁い(憂い)
第4章 パートタイムラブ…
 ⑩

「いらっしゃいませぇ…」

 その男は、毎朝、午前9時前後に缶ビールとお弁当を買っていく…

 いつもの様に…

「ホント、よい男だわぁ…
 今度、思い切って、話し掛けちゃおうかしら…」
 わたしと同じ年齢のパート主婦仲間が、そう囁いてくる。


「うん、思い切って訊いてみたらぁ」

「ええ、そうかなぁ、相手をしてくれるかなぁ?」
 パート主婦は昂ぶった顔をしながら、そうわたしに話し掛けてきていた。

「え、もしかして…キャ、どうしよう」
 と、一人勝手に盛り上がっている。


 ごめん、彼は、もう、わたしの男なの…
 と、わたしは内心彼女を見ながら、そんな優越感に浸っていた。



 そう彼、祐也さんは、あの日…

 映画館で出会ったあの日に、わたしのセックスの価値観を…

 いや、日常生活の全ての価値観を根本的に変えた、ううん違うわ…

 今までのわたしの価値観の全てを根本的に変えられてしまったのだ…


 その位に彼のセックスは…

 ワイルドで…

 衝撃的だったのである…


「ねぇ悠里さん、シフト本当に減らしてもいいの?…」

「うん、いいわよ」

「よかったわぁ、旦那の残業が減っちゃってさぁ…
 わたしがもう少し稼がないとさぁ…」

「わたしは平気だからさ…」

「うわぁ、助かるぅ」

 そう…

 そのシフトを減らした分、わたしは彼、祐也さんの元に通い…
 そして彼を愛し、愛され、抱かれていた。

 全ての日常生活…

 このパートタイム…

 そして夫との変わらぬセックスレス…

 義母に対してのストレス…

 全てが、彼とのセックスにより…

 発散され…

 解消され…

 そして、より心が充実し…

 全ての日常生活が劇的に変わったのである。

 そんなわたしの心は全て彼との逢瀬に捧げ、それ中心に生活をしていっていたのだ…

 それはつまり彼、祐也さんを愛しているという事であり…

 もう、何が何でも離れられない…

 そして…

 わたしの生理が遅れていた…

 もしかしたら不妊の原因はわたしではなく?…
 

 そうだったら良いな…

 そうだったら…

 もっと全て、全部を思い切って…

 捨てられるのに…

 パートタイムラブでは無く…

 フルタイムラブに…

 成れるのに…





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