この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
淫魔の宿へようこそ
第2章 訪ねてきた料理人
そんな彼を見て、ニコラスはようやく全身から強ばりが抜けていくのを感じました。
「ご、ごめんなさい。 女性だと分かるときっと雇って…もらえない、から」
無言のドルードが元のようにニコラスのシャツのボタンを胸元まで留め、三度微笑みました。
「仰るとおり……わ…私はニコル…という名前です」
「確かに女性の料理人なんて滅多にいるものじゃないし……それでも君みたいに若い女の子が、あんなものを短時間で作れるとは驚いたよ。 あれは家庭料理じゃない、お客に出すものだ」
まだニコルの心臓は激しく鳴っていました。
それでも体を離して椅子に腰掛け、話し始めたドルードはそれ以上のことをニコルにしようという気はないようでした。
「マエロも教えてくれたよ。 僕が倒れてる間、金庫や調度品に見向きもしないで、一生懸命食材運んで作ってくれてたって。 ここに泥棒が来ることだって珍しくないからね」
「マエロ……犬が?」
マエロはドルードの方に体と顔を向け、まるで何かを伝えてでもいるようにも見えます。
「良ければ君の身の上を話してくれる?」
不思議な男の子。
今年成人したニコルからは、なぜか彼は自分よりもずっと歳上のように思えました。
そしておずおず話し始めた女の子に、ドルードとマエロはじっと耳を傾けました。