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淫魔の宿へようこそ
第3章 ホテルのお仕事


表情を変えずただ外を眺めているマエロには彼の考えは分かりません。
ただ続く沈黙については、これ以上話したくないというドルードの意思表示です。

「出過ぎたことを……失礼いたしました」

マエロは静かに断りを入れ、出口に向かって踵を返しました。

「……マエロ、近々僕は街に行ってくるよ。 彼女を頼めるかな」

「珍しいですね。 分かりました」

そして戸口で一礼したマエロはドルードの部屋を後にしました。


彼はふいとそれを目で追いながら小さく声に出します。

「あ、分かった……」

諸々の情報をかき集めると彼が思い付くのはこれぐらいでした。

マエロの言う通り、人間だろうが悪魔だろうが性欲は存在するものです。

インキュバスとして異性を魅了する能力は備わっていても、ドルードの場合はそれで糧を得ることはありませんし

「僕はアレだ。 きっとヤリたいんだけなんだな」

善良で見るからに純情そうなニコルにそうするのは気が進みません。

自分は何年か空腹で動けなかったせいで、単に溜まっていただけに違いない、娼館でも行って適当に発散してこよう。 そう思ったドルードは面倒くさそうに長椅子の手摺りに頭をもたせかけました。

「……君がヤキモチ焼きなのを分かってやってるんだ。 気に食わないんなら、僕に文句でも言いに来なよ」


誰ともなくドルードは呟いて静かに目を閉じました。




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