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淫魔の宿へようこそ
第1章 プロローグ
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けれども千年どころか、そのたった五十年後に、彼女は変わり果てた姿となって彼の前に現れました。
「サイラス……? セ、セシリアは…彼女に一体」
力無く頭を垂れたセシリアを抱いているサイラスの表情は悲痛でした。
「昨晩豪雨があっただろ? つまらない落下事故だ。 インキュバスと違って、人間の精を受けたことがないセシリアは普通より脆い。 そのせいでお前を責める気はねえ……妹が自分で選んだ道なんだからな」
「まさか…そ…ん、…………」
最後の方は掠れて声になりませんでした。
成人になりきる前のセシリアはまだ少女の面影が残っています。
彼女と同日に生まれ、一緒に生きてきた自分と同じように。
「あ…っ…ああ、ああっ…セシ…リアっ!! セシリア!!」
彼はその場で膝をつき泣き崩れました。
何年も何年も、棺の傍で彼女の死を悼みました。
〈ねえ、千年人の世界に住むと悪魔は人になれるの〉
ある日、殆ど骨と皮になった自分の手を見つめ、彼は彼女の言葉を思い出しました。
「………そしたらセシリア、君は千年後…いつか、生まれ変わる?」
棺の中の彼女は生前と変わらず、美しい姿を保ったままでした。