この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
淫魔の宿へようこそ
第1章 プロローグ
彼女の亡骸を大切そうに腕に抱いた彼は、セシリアの兄の元へ別れを告げに行きました。
彼女によく似た、端正な表情を崩したサイラスは苦々しい口調で彼を引き留めにかかりました。
「ドルード……万が一だな、よしんばセシリアが生まれ変わっても、お前はもう生きてないかもしれないだろ? 向こうとこっちじゃ、時間の進み方がまるで違う。死んでるセシリアが生き返るのかも分からない」
「いいんだよ、サイラス。 もしも彼女が生き返る可能性があるのなら。 人として家族を持ちたかったのなら…それはたとえ僕じゃなくっても……僕は彼女の傍で、この姿のまま時を止めて人の世界で生きるよ」
「お前はホントに……俺らの仲間なのかねえ。 人間の食いもんだけで平気で生きてけるインキュバスってのも変な話だぜ」
「サイラス。 セシリアやこんな僕をしょっちゅう気にかけてた君も、割と似たようなものだろう? 向こうでまた会おう」
そんな彼の言葉にサイラスは肩を竦めました。
そうしてインキュバスの少年は、人間の世界で生涯を終えることに決めたのでした。