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淫魔の宿へようこそ
第5章 情動の意味
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夕食の後、デザートを仕上げたニコルは廊下に出たところを後ろから声をかけられて振り返りました。
「ニコル、上がりかい?」
親しげに近付いてくるサイラスに、やはりビクッと反応してしまいます。
「ははっ、またまた。 あからさまに怯えなくってもいいって」
「あ……私、そろそろ部屋に戻って明日の仕込みを考えなくちゃいけないので……」
「ニコル殿」
その後に反対方向から彼女を呼んだのはマエロでした。
給仕の仕事が終わったばかりだからか、今は人の姿をしています。
マエロはニコルに向かって微かに首を横に振りました。
「……ドルード様が呼んでいましたよ。 彼の部屋です」
ニコルは天の救いとばかりにマエロに走り寄りました。
「分かりました、お、おやすみなさい。 サイラスさん!!」
そう言ってぶんっと頭を下げると、ニコルはそのままドルードの元へと走っていきました。
「……あーあ、また逃げられちゃったか」
去っていくニコルの背中を見つめながら、サイラスは残念そうにつぶやきました。
「サイラス様。 お言葉ですが、彼女はドルード様の所有ですので」
「ワンコ君、馬鹿にしないでくれる? もしホントにそうだったら、この俺がこんな風に追っかけ回してるわけないだろ」
ふっと笑みをこぼすサイラスに、マエロは複雑そうな表情を返しました。