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淫魔の宿へようこそ
第2章 訪ねてきた料理人
ニコラスはメモを手に一人、森を歩いていました。
茶色の髪は耳と首筋まですっきり切られ、髪の色には珍しい、明るい灰色の瞳をした男の子。
小柄ですんなりした彼の体は逞しいとは真逆で、けれどすばしっこく快活な印象です。
「確かこの辺りにあるはずなんだけどな……」
ニコラスがこう呟くのはもうこれまでで十回目。
相変わらず彼の両脇と頭上に見えるのは
木。
木。
草。
………そして木。
彼が手にしているメモは、働き先を斡旋してくれた機関からもらったもので、
そこで働く男性がやる気なさげに教えてくれたのでした。
『ああ、その森のホテルね。 ミルストリートの洋品店の角を曲がって、遠くに城が見えるはずだ。 その途中にあるから小道に沿って行くといい』
そんなちょっと近所にあるからみたいな言い方をされたというのに、洋品店を曲がりしばらくして急に狭くなった道。
舗装もされていない土くれを踏みしめ歩き続けると、あとは鬱蒼とした森が続いていました。