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千一夜
第33章 第五夜 線状降水帯Ⅱ  ⑥
「はぁ~」
 カレンはため息をついた。
「でも好きだったから結婚したんだろ」
「もちろんよ」
「君の気持ちがその人から離れたわけだ」
 伊藤はカレンの心の中を推測した。
「見る目がなかっただけよ。天才と凡才を見分ける目が私にはなかった」
「……」
 数秒の空白。
「クズだけど伊藤は天才よ。あの芝居はよかったわ。三人の役者が違う地方の舞台で同じ芝居をするなんて誰も考えられないわよ。それに三人のアドリブが最高だったわ。私は三人の舞台を全部見たわ。三者三様でめちゃくちゃ面白かった。それって伊藤の計算? ひょっとして伊藤はその世界を見てきたの?」
「見てきたと言ったら」
「神様は卑怯よ。天才にだけ光と闇の世界を見せるんですもの」
「僕は天才なんかじゃない」
「そうよね、伊藤はクズ」
「ふん」
「そう言えばあの男も映像とか作っていたような気がするんだけど」
 カレンはベッドの中でのルールを破った。
「あの人何してたんだ?」
「知らないわ」
「知らないわけないだろ。何かをしなければ人間は食っていけない」
「何もしなくても、どこからかいつの間にかお金が入っているのよね」
「不思議だな」
「そう、不思議でつまんなくていんちきな男」
「酷い言われようだな。かつての君の彼に同情したくなるよ」
「あの男に同情なんて必要ないわ」
「でも僕は同情するね。こんなにいい女を逃がしてしまったんだ。バカなクソ野郎だ」
「そう、あの男はバカでクソ野郎よ。そしてこっちも下手」
 カレンはそう言うと伊藤の肉棒を握った。
「もういいよ。それに時間は有効に使わなければいけない。僕が今優先させるべきことはこれだ」
 伊藤がカレンの乳房を揉んだ。
「異議なし。でもその前に伊藤に言っておくことがあるわ」
「何?」
「私はまだ女優よね?」
「当たり前だ」
「私にも女優としてのプライドがまだあるの」
「プライド?」
「そう、プライド。男と寝て役を貰うなんて御免だわ。枕営業なんて売れないバカタレントがやることよ。だからさっきの話はなかったことにして」
「それでいいのか? 君が得るものは何もないぞ」
「構わないわ。得るものより女優としてのプライドの方が大事よ」
「何だか釈然としないな。僕だけが得をしている」
「そうでもないわよ。私は安物の時計を伊藤から貰ったから」
「安物ではない。シチズンホーマーという時計だ」
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