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千一夜
第33章 第五夜 線状降水帯Ⅱ  ⑥
 カレンのま〇こを突くスピードが増した。もうすぐ伊藤はいく。そういう男の動きをカレンが知らないわけがない。そしてカレンも伊藤に強く突かれることでいきそうになっていた。
 こういうときに男と女が願うことは同時にいくことだ。ただ、こればかりは伊藤もカレンもコントロールができない。数秒早く相手より早くいくことがあるかもしれないし、数秒遅れることだってあるのだ。
「出すぞ」
「……」
 カレンは何も答えなかった。
 カレンの肩に回していた伊藤の手が、いつの間にかカレンの腰を抱えていた。人間の雄の本能。カレンの一番深いところで精液を発射する。
「出る!」
 伊藤がそう言った次の瞬間、カレンは自分の膣中にほんのり温かいものを感じた。
「……」
 カレンから言葉が出ない。それは当たり前で、伊藤とカレンは互いの口を貪っていた。
 キスをしながら二人は忘我の境地に入っていた。伊藤は射精した後の心地よさに酔い、カレンは自分の中に入っていた伊藤の肉棒が徐々に硬さを失っていくことに満足していた。
 カレンは自分の膣から出ていかない伊藤の肉棒を感じながらこう思った。間違いなく伊藤は落ちた……と。
 繋がっていた二人が離れた。するとカレンがベッドを下りた。
「どこに行くんだ?」
「シャワーよ。クズの汚いものを出してくるわ」
「これで終わりじゃないよな?」
「伊藤さ、年取ったらスケベになったんじゃない? 伊藤、エロ親父じゃん」
「否定はしない。僕はエロ親父だ。ただ君は間違えている。僕は昔からスケベだった」
「クズ」
 カレンはそう言ってバスルームに向かった。
 五分ほどして伊藤もまたカレンがいるバスルームに向かった。比較的大きなバスタブの中で二人は互いの体を洗い、次の交接のために体を弄り合った。
 二人がベッドに戻った。伊藤はカレンにキスをした。伊藤がカレンの胸に手を伸ばそうとしたときだった。カレンが話し始めたのだ。
「失敗したわ」
「失敗? 失敗ってどういうことだ?」
 伊藤の頭にカレンが犯した事件のことが過った。
「結婚」
「結婚?」
「そう、結婚」
「性格の不一致か?」
「性格なんて最初から不一致よ」
「じゃあ何?」
「あの無能のことを思い出すと自分を百回殴りたくなるの」
「あの人無能だったのか?」
「知ってるくせに。伊藤なら見分けられるでしょ、本物と偽物を」
「……」
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