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千一夜
第40章 第七夜 訪問者 影
「お嬢様、あと十分ほどでホテルに到着します」
「竹内さん、一週間よろしくお願いします」
 咲子は改めて竹内にそう挨拶をした。
「一週間お世話になります」
 私も咲子に続く。
 竹内は遠山機械工業の役員たちを送迎する会社専属の運転手だった。定年退職後は遠山家の運転手となった。竹内は時間を読みながら常に安全運転を心掛ける。温厚で誠実な男は、退職してもハンドルを握り続けることができる。
 竹内は私たちを千歳で出迎えるために、北海道に先乗りしていたのだ。車は遠山家のレクサス。高級車の後部座席は初めての経験だ。こういう車に乗りなれていない私は、ずっと尻のあたりがむず痒い。
 役所で使う車は、市長専用車を除いてすべてが軽自動車。私の車は国産のコンパクトカー。千万円を超える車に乗るなんて生涯無縁だと思っていた。悪くはないが、やはり私には分不相応だ。
「長谷川様」
「竹内さん、様は止めてください。私は役所の職員です。私に様なんて必要ありません」
「申し訳ござませんでした」
「いや」
「長谷川さん、お嬢様お強かったでしょ?」
「ずるいですよ。プレーが終わった後に、実はシングルだって言われても。歯が立ちませんでした。ゴルフなんて二度としたくないと初めて思いましたよ。これじゃあ役所に戻れませんよ」
「役所に戻れないってどういうこと?」
 咲子が不思議そうにそう訊ねた。
「同僚たちから言われてたんです。遠山機械工業には絶対に負けるなって」
「ふふふ」
「咲子さん、笑い事じゃないですよ。どの面下げて役所に行けばいいんですか?」
「だったら長谷川さんはお嬢様と一緒に市役所に行けばいいんですよ」
「竹内さん、本気で言ってますか?」
 レクサスの後部座席から私は竹内にそう言った。
「本気ですよ。勝っても負けても仲がいいのが一番ですから」
「ふふふ」
 大きな咲子の笑い声だった。
「でも長谷川さんは一つだけ勝負に勝ちましたよ」
「私が勝った?」
 私は竹内が言った勝負の意味がわからない。
「北海道から沖縄までお嬢様をゴルフ場にお連れしたのは私です。今日のお嬢様の笑顔が一番です。お嬢様は長谷川さんとコースを一緒に回られて楽しかったのでしょう。そうですよねお嬢様?」
「ふふふ」
 微かに咲子が使っている香水の匂いがした。
 
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