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千一夜
第42章 第七夜 訪問者 雨

車が道央自動車道に乗ると、レクサスのフロントガラスに雨がぽつりぽつりと当たり始めた。眠ろうとしたわけではないが、目を閉じたら、私はすとんと眠りに世界に落ちてしまった。
眠りの世界には咲子がまとっている香水が漂っていた。だから私はこう思った。咲子もまたこの眠りの世界のどこかにいるのだと。
竹内の運転する車はスムーズに発進し優しく止まる。もちろん多少の揺れがないわけではない。だが竹内の運転と高級車の性能が融合すると、揺れは揺れでなくなる。
高級車の後部座席は、大人のために用意されたゆりかごのようだ。
目を開けると、レクサスのワイパーが勢いよく動いていた。
「ははは」
笑ったのは竹内だった。
「何? 何がおかしいの?」
咲子が竹内にそう訊ねた。
「お嬢様、申し訳ございません。実はお嬢様と長谷川さんは同時にお休みになられたんです。そして同時に目を覚まされました。それがおかしくて笑ってしまいました。本当に申し訳ございません」
「竹内さんの運転が素晴らしんです。何だかここに座って目を閉じると不思議と寝てしまう。すみません」
「ははは。長谷川さん、構いませんよ。眠いときは遠慮なくお休みください」
「ありがとうございます」
「それにしても雨が強いわね」
咲子が話題を変えた。
「申し訳ございません。予報によると、今北海道に降っている雨は明日まで降り続くようです」
「竹内のせいじゃないわ。それに雨の北海道も悪くないんじゃない。そうでしょ? 長谷川さん」
「でも雨だと運転しずらいんじゃないですか?」
「大丈夫です。私は遠山家の運転手ですから。晴れの日もあれば雨の日もある。雪の日だってありました。安心してください」
「もう少し休みたいわ」
私の肩に頭を乗せて咲子はそう言った。
咲子が「もう少し休みたい」といったとき、私は睡魔に襲われた。眠りの世界に手を引かれるのだが、何か引っかかるものがある。咲子が眠くなると自分も眠くなる。奇妙なシンクロだ。それとも偶然なのだろうか。やがて睡魔は私から思考を奪った。先ほどと同じく私は眠りの世界に真っ逆さまに落ちた。そこにはまた咲子の香水の香りが漂っていた。
あれ? 何かが見える。何だろう? 私はそれをどこかで見たことがある。いやいや違う。しっかりしろ。あれは人間だ。私はその人にどこかで会ったことがある。
眠りの世界には咲子がまとっている香水が漂っていた。だから私はこう思った。咲子もまたこの眠りの世界のどこかにいるのだと。
竹内の運転する車はスムーズに発進し優しく止まる。もちろん多少の揺れがないわけではない。だが竹内の運転と高級車の性能が融合すると、揺れは揺れでなくなる。
高級車の後部座席は、大人のために用意されたゆりかごのようだ。
目を開けると、レクサスのワイパーが勢いよく動いていた。
「ははは」
笑ったのは竹内だった。
「何? 何がおかしいの?」
咲子が竹内にそう訊ねた。
「お嬢様、申し訳ございません。実はお嬢様と長谷川さんは同時にお休みになられたんです。そして同時に目を覚まされました。それがおかしくて笑ってしまいました。本当に申し訳ございません」
「竹内さんの運転が素晴らしんです。何だかここに座って目を閉じると不思議と寝てしまう。すみません」
「ははは。長谷川さん、構いませんよ。眠いときは遠慮なくお休みください」
「ありがとうございます」
「それにしても雨が強いわね」
咲子が話題を変えた。
「申し訳ございません。予報によると、今北海道に降っている雨は明日まで降り続くようです」
「竹内のせいじゃないわ。それに雨の北海道も悪くないんじゃない。そうでしょ? 長谷川さん」
「でも雨だと運転しずらいんじゃないですか?」
「大丈夫です。私は遠山家の運転手ですから。晴れの日もあれば雨の日もある。雪の日だってありました。安心してください」
「もう少し休みたいわ」
私の肩に頭を乗せて咲子はそう言った。
咲子が「もう少し休みたい」といったとき、私は睡魔に襲われた。眠りの世界に手を引かれるのだが、何か引っかかるものがある。咲子が眠くなると自分も眠くなる。奇妙なシンクロだ。それとも偶然なのだろうか。やがて睡魔は私から思考を奪った。先ほどと同じく私は眠りの世界に真っ逆さまに落ちた。そこにはまた咲子の香水の香りが漂っていた。
あれ? 何かが見える。何だろう? 私はそれをどこかで見たことがある。いやいや違う。しっかりしろ。あれは人間だ。私はその人にどこかで会ったことがある。

