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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
「フェアじゃなきゃいかんからな」
「フェア?」
「君は知ってるよな? 私が君の事を徹底的に調べたということを」
「はい」
 誰がリークしたのか、咲子の父は私の小学生時代の成績まで知っている。私の小学校時代の成績を知っているのは教師と私の両親、そして私だけだ。たとえ遠山の頼みでも教師がかつての教え子の成績を遠山に教えることはない。まさか私の両親が……。
「長谷川君、咲子と結婚してくれるよな」
「もちろんです」
 誰にでも隠しておきたい過去はある。咲子の過去の男に驚かないと言ったら嘘になるが、過去は消せるものではないし、私はそういうところを深く考える人間ではない。大切なのは咲子との未来だ。
「ここまで咲子のことを話したんだ。もし君が断ったら、私は君を地球の反対側に飛ばしてやるつもりでいた。どうやって君を地球の反対側に閉じ込めてやろうかと考えている時間が楽しかった。君には悪いがね」
 口角を上げた顔を咲子の父は私に向けた。
「……」
「裏切るなよ。咲子も遠山の家も。だが一番裏切ってはならないのはこの街の人たちだ。この街の暮らし、そしてこの街の未来だ。君がつまらない人間だったら遠慮なく君を地獄に落とす。覚えておけ」
「はい」
「市長の就任祝いにプレゼントがある」
「……」
 市長選は年末、だが対抗馬に誰が出ようと私は勝つ。
「今建設している遠山音楽会館を好きに使え。開館は来春。これで少しはラッシュアワーが緩和できるだろ」
「ありがとうございます」
 咲子の父が言ったラッシュアワーとは、私の街の文化会館音楽ホールのことだ。十年ほど前、市は遠山機械工業が所有する土地に文化会館を建てた。
 建てられた文化会館はただの文化会館ではなかった。咲子の父は音響効果にこだわった。  
 音響効果が優れた会館は、地元の中学や高校だけでなく県内外の吹奏楽部を持つ学校から注目を浴びた。
 他県の高校に三日間ホールを貸し出したときには、保護者からのクレームの電話が鳴りまなかった。
 これが大会前となるとさらに面倒なことが市の職員を悩ませる。演奏の練習くらい自分の学校の体育館でやれよと言いたいのだが、体育館で演奏した音とホールで演奏した音では全く違うのだそうだ。指導者も生徒たちもいい音を求める。いい音は演奏者たちに自信を与える。その自信と共に生徒たちは大会に臨む。
 
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