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千一夜
第57章 第八夜 island 王道
「もしよかったら、今度その秘書さんに会わせていただきたいのですが」
「池沢に?」
「池沢さんとおっしゃるんですね」
「超美人ですよ」
「はっ?」
 私の声は、女の本能の声。
「モデルみたいな美人ですよ」
「……」
 おそらく河田は、自分の横にいる私を女だと思っていないのだろう……無礼者!
「今度お店に池沢と伺います」
「お待ちしております。何だかとても池沢さんにお会いするのが楽しみです」
「池沢にも深川めし食べさせてやりたいんで。そうだ、今回のデートプランを立てた池沢を招待することにしませんか?」
「……」
 無神経にもほどがる。「招待することにしませんか?」って、私は池沢さんにこのデートのことを頼んだりしていない。私を自分の計画に無理やり巻き込んで……?
 えっ??? ……ええええ!
 バカなのは河田だけではない。バカは私だ。私は大馬鹿者だ!
 さっきから河田は何度もデートと言う言葉を繰り返していた。私はそのデートと言う言葉を他人事ののように受け止めていた。デートとは誰かのデートのことであり、私には一切関係ないと。
 だが、河田はこうも言っていたのだ「今日のデート」と。今日のデートって、レンタカーを運転する河田の隣に座っている私のデート……。
 私は今、河田とデートをしている。
 私は紙にもう一度目を落として今日のデート内容を確かめる。王道、そしてドライブとグルメ、なぜか“?”のマーク。
 ドライブの近くには湘南と書いてあった。海なし県で育った私は、海という言葉に敏感だ。テンションは爆上がり。そしてグルメの近くには、私の知らない店(多分レストランかカフェの名前だと思う)が三つ書いてある。ここは河田の秘書池沢の舌に期待したいところだ。
 告白する。私は食通ではないが、間違いなく食いしん坊だ(食通と食いしん坊の境目が今一つはっきりしないが)。
 恥ずかしいが、私は今でも美味しいお店という言葉にアンテナを張っている。どこに網をかけるのかというと、それはネットから拾った口コミであったり、雑誌に書かれてあった記事からであったり。
 しかし、“?”って一体何だ?
「今工藤さんは“?”について考えてますよね? “?”って何だろうと。“?”というピースが埋まることによって今日のデートは完成です。ドライブ、グルメ、“?”、これこそデートの王道なんですよ、ははは」
「……」
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