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第8章  啓子
浴衣を着た和恵と 囲炉裏の前へ向かった
目の前の席が空いているのを見て 和恵を促し
左に座って居る年配の女性に軽く会釈をして座った
傍に来た女性にビールを頼み 和恵とグラスを合わせ
右隣の二組の夫婦に軽く頭を下げた

二組の夫婦がビールのグラスを傾け談笑している時
支配人が食堂から一升瓶を抱えて出て来ると

「 3年寝かせた お酒です・・・ 」
一升瓶を抱えて見せ お酒の中で花が揺らいでいるのが見え

「 家の宿のお勧めに 成って居ます 市販出来る程の
  量は作れませんので お泊り頂いたお客様への
  ご提供とさせて 頂いております お湯割りがお勧めですが 」
囲炉裏に座る宿泊客を見回してくる

「 お湯割りで・・・ 」
泰三の右に居た二組の夫婦達からの声に合わせ
皆が頷くのを見て 誠は大ぶりの湯飲みにお酒を注ぎ
お湯を入れ 泰三の横に置いて行くのを隣の夫婦達が取り
泰三は左に座って居る夫婦達に配り 年配のふっくらとした
女性が頭を下げた 誠が湯のみを持ち

「 本日は 有難う御座います どうぞ
  お召し上がりください 」
皆が湯呑を口に運び 右に座る夫人の声が

「 美味しい・・・ 」
呟く様な声に 他の客達も頷き
誠に お替わりを注文していく
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