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dear大切な人~クリスマスの奇跡~
第9章 狂おしい程キミが好き
「ほんまに作れるんか?」
「うるさいなぁ..できるよ!」
百合ちゃんが頬を膨らませてレシピをにらむ。
俺はソファからキッチンを覗きながら、ハラハラしていた。
百合ちゃんはちょっと..というか結構料理が苦手らしい。
母親譲りだと言い訳していたけど、一体お母さんがどれほどの腕前なのか気になる。
「俺も手伝おかー..?」
恐る恐る聞くと、無視された。
諦めて大人しくテレビに向き直り、バラエティー番組を見る。
どこのテレビ局も、クリスマスネタばかりだった。
そして..一時間後。
「できたぁ!」
百合ちゃんの声で、俺は食卓に向かった。
色とりどり..というか、形とりどりの品々を見て、苦笑い。
指が震えて真っ直ぐ切れなかったのかという程のいびつな形ばかりだった。
「ね、今日は上手くできたでしょ!?」
「あ、う、うん!せやなぁ!はよ食べたいわ!」
(大好きな百合ちゃんの手料理が、不味いわけがない!俺の舌がおかしいんや!)
と毎回のように自分に言い聞かせ、箸をつけた。
「百合ちゃん..これはなに?」
「もうー鳥のテリヤキだよー」
「ああ、そやったな!..頂きます!」
そういって、ちょっと焦げかけた照り焼きを口に運んだ。
百合ちゃんがじっと俺を見つめる。
ゆっくり噛み締めると、甘いソースが口に広がり....
「..おいしい。」
確かに照り焼きだった。
俺はびっくりしてまた口に運んだ。
(ふ、普通の照り焼きや!!)
感動してその他のものも食べてみると、意外にもおいしかった。
今までお世辞にも美味いとはいえなかった(おいしいといえば、勉強会の時のスパゲティくらいで、あれもマキがさり気なく手伝ってたらしい)のに、ちゃんと料理になっていた。