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ソルティビッチ
第1章 ソルティビッチ…
 9

 その男の子は、わたしの席からは一番遠い、反対側の左側端の席に座っていた。

 あら、かわいい男の子…
 見た目は22、3歳、新卒サラリーマン風に見える。

 ソフトモヒカン系のショートヘアーで、清潔感があり、クリっとした目のかわいい、スッキリした感じの、わたしのエス心が疼く様な…
 正にかわいい男の子って感じであった。

 初めて見る顔だわ…

「はいお待たせしましたぁ」

「うん、ありがとう」

 すると彩ちゃんはわたしの視線に気付いた様で…

「あ、あの彼ね…多分、初めてよ…」
 ポツリと呟いてきた。

「ふぅん…」

「かわいい感じよね…」
 そしてそんな彼を気にしているわたしの視線に『意外だなぁ…』って、顔をしながら言ってくる。

「あ、うん、たまにはあんな感じもいいかなぁってね…」
 そんな彩ちゃんの視線の意味を理解し、言い訳的な感じでそう言った。
 
 ここ最近はずうっと肉食系的な、ガンガンと攻めてくる感じの男ばかりを相手にしていたから…
 彩ちゃんには意外に感じたのであろうと思われる。

 だが…

 決してわたしからは誘わない…

 なんとか向こうから誘ってくる、声を掛けてくる様に仕向ける…

 それにわたしの方から誘ってしまうと、後々の逃げ口上にもならないし…

 そしてそこが、わたしのビッチさたる由縁であり…
 ズルさなのでもあった。

 しかし…

 本当にかわいい感じの男の子タイプであり…

 そしておそらくは、ガツガツとしたナンパ目的では無いのだろうと思われ…

 彼からはアプローチどころか…
 わたしには全く無関心な感じさえ漂ってきていたのである。

 そんな時は、諦めるし、こちらからは決して求めはしない…

 バーに一人で訪れるという事…
 それは皆が皆ナンパ目的では無く、それぞれに、各々に目的や、理由がある訳であり、様々なのだ。

 ただ、このバーの名前は…

『Bitch(ビッチ)』なのだ…

 メス犬、クソ女のスラングの名前である。

 そんなバーに一人で飲んでいる女の存在…

 それは、いや、それ自体が、ナンパ待ち目的に捉えられる方が当たり前的に思われるのが…
 普通であると思う。

 だが…

 彼は、わたしには全く興味が無いみたいであった…

 それは、それで仕方がない…

 そんな夜もあるのだ…




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