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ソルティビッチ
第1章 ソルティビッチ…
 20

 ひと息入れようか…
 
「こっちに…」
 彼の股間から爪先を外す。

「さぁ、おいで…」
 彼を眺めていく。

 彼は…

 チャコールグレーの上下のスーツ…

 薄いピンク色のワイシャツ…

 水色と白の斜めストライプのネクタイ…
 と、見るからに爽やかな新卒サラリーマンの様相である。

 そして170㎝位で細く、スラリとした体型で、ソフトモヒカンスタイルの清潔感のある黒髪ヘア…
 それになにより色白で、本当にかわいい顔付きの男の子って感じであった。

 だが、右手薬指に、そんなかわいいイメージとは真逆なクロムハーツのやや細めなダガーリングをはめていた…
 それに少し違和感を感じたのだが、右手薬指という事で、大切なプレゼントなのだろうとだけ思ったのだ。

「さぁこっちに…」
 そしてわたしは目の前に招き、ネクタイを外してあげる。

「キミ、名前は?」

「あ、はい…駿、しゅんです…」

「ふうん、駿くんかぁ…」

「わたしはね…」

 そう言うと…

「ゆ、ゆり、悠里さんですよね…」

「え…」

「あ、さっきのバーで会話が少し聞こえたから…」

「そう、そうなんだ…
 で、駿くんはいくつなの?」

「はい、23歳になったばかりです…」

「あら…そう…」

 その、あら、は、やっぱり新卒サラリーマンの年齢が当たったという事と…

 本当に若いんだなぁ…と、いう事であった。

 そしてそんな事を訊いた自分に少し違和感を感じてもいた…
 なぜなら、いつもはこんなワンナイト的な相手には…
 ヘタすれば名前すら訊かない事の方が多いからである。

 それはきっと彼が…

 久しぶりにストッキングラブの嗜好を刺激してくる様に、わたしのストッキング脚の爪先を嬉々として、愉悦で恍惚な表情を浮かべながら舐め、しゃぶってきたせいだからと思われる。
 
 わたしらしくないな…
 ふと、そう想い、そして、少しそれが悔しく感じてきた。

 あともうひとつ…
 彼が、駿が、まるで中性的な感じにかわいい顔をしているせいもあったと思うのだ。

 なぜなら、わたしは男に対してはエスの昂ぶりを覚え…
 彩ちゃんとの関係の様に女性相手にはどっちかといえばエム的になってしまうからである。

 だから、彼、駿の中性的な顔立ちのせいで…
 エスで、ビッチな衝動が弱まったのかもしれない。



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