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ソルティビッチ
第1章 ソルティビッチ…
 46

 すると彼氏がトイレに立ち、彼女一人になった…

「あっ」

 その彼女は変わらずにわたしを見つめながら『ドライマティーニ』であろう、カクテルグラスを唇に付け、そしてそのオリーブの実を唇に含み…
 わたしに向けて舌を伸ばし、舌の上で転がしてきたのである。 

 それも、獲物を狙う目から濡れた目に
変わってきた…

 そして、そのオリーブの実を舌の上で転がす…
 それはわたしの男を誘う十八番の必殺技であるのだ。

 わたしは、完全に彼女に誘われている…
 間違いない。
 確信した。

 だがわたしは、その彼女の目に、濡れた目に…
 心を捕らわれたままでいたのだ。

 なぜなら、わたしはなぜか男に対してはガンガン攻めていくエス的な気質があるのだが…
 彩ちゃんにも然りなのだが、なぜか女性に対しては受け身的なエム的な気質であったのである。
 
 だからいつもの様にナンパしてくる男性が相手ならば、わたしが逆手に取ってしまうようにこちらから仕掛けてしまうところであるのだが…
 
 彼女の獲物を狙うかの様な目からの、今度は艶やかな濡れた欲情の目に変わったせいで…
 どうにもその目に魅入られてしまい、心を震わせ、縛られてしまっていたのだ。

 そして…

 なんとなくだが…

 あの彼女の目を…

 どこかで見た様な記憶があると…

 心がザワザワと騒めき、囁いてきていたのである。

 どこだ?…

 誰だ?…

 どこで見た目だ?…

 心が高鳴り、昂ぶり、騒めいてくる…

 彼女の目は?…

 彼女は…

 誰?…

 誰なの?…




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