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ソルティビッチ
第1章 ソルティビッチ…
 51

 プルプルプル、プルプルプル…

 わたしはマンションのエントランスに歩きながら、駿にダメ元で電話を掛ける。

 コツ、コツ、コツ、コツ…

 エントランスホールの大理石の床にわたしのハイヒールの音が響き…

 そして…

 ブー、ブー、ブー、ブー…

 スマホの呼び出しのバイブの震動音が…
 聞こえてきた。


 すると…

「あ、えっ…」
 
 エントランスホールの角を曲がり、エレベーター前に…

 ブー、ブー、ブー、ブー…

 スマホを手にした女性が…

 イヤ…

 駿が…

 立っていた。

「あっ、し、駿…」


 すると駿は…

 いや、美しくキレイな女性が…

 わたしの方に顔を向けてくる。

 ドキッ…

 わたしはその美しくキレイな駿と、いや、その女性と目が合った瞬間に…

 ドキンと心を震わせ、ううん違う…

 ときめかせてしまい…

 その妖艶な魅力に一気に魅了されてしまったのだ。


「し、しゅん…」

「あら…見つかっちゃったわ…」

 その声は、ややハスキーではあるが、正に女性そのものの声…

 この前の駿の声とは全く違って
いた。


 それに右手の薬指のクロームハーツのダガーリングと、あの目を確認しなければ…

 全く別人の…

 見知らぬ…

 そして、ホンモノの女性にしか…

 見えない。



「し、しゅん、ど、どうして…」

「いえ…

 わたしは『しゅん』でなくてよ、悠里…」

「え?…」


「わたしは…
 
 『葵、あおい』なの…」

 駿は、いや、葵は…

 そう囁いてきた。


「え…あおいって?…」

 心がザワザワと騒めいていた…

 あおい…

 葵…

 
 
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