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ソルティビッチ
第1章 ソルティビッチ…
 53

 駿は、いや、葵はコツコツとハイヒールの音を鳴らしながら、わたしの部屋の前へと歩いていき、ドアの前で止まる。

 わたしの部屋を知っているんだから、やっぱり駿に違いない…

「悠里、早くドアを開けて」
 葵はわたしにそう命令口調で囁く。

「あ…」
 そしてわたしは言われるがままに暗証番号を打ち込み、ドアロックを開ける。

 ピー、ガチャ…

 そのドアロックの開錠の音は…

 まるでわたしの心が開いた音の様…

 ガチャ…

 そしてドアを開けた瞬間…

「あ…ん…」

 葵はわたしを玄関の壁に押し付けるように押さえ付け…
 唇を吸ってきた。

 葵の甘いルージュの味が広がり、心が震えてしまう…

「ほら、わたしと…したいんでしょう?」
 唇を離し、わたしのアゴをクイっと人差し指で軽く持ち上げて、見つめながら…
 そう囁いてきた。

「あ…う…」

「わたしとさぁ…」
 
 したくて、ヤリたくて…

 わたしを追いかけてきたんでしょう?…

「や、あ、うぅ…」

 違うとは言えなかった…

 いや、その通り…

 だから…

「ふん、ビッチ…

 牝イヌね…」

 
「あぁぁ…」

 すっかりエム的な思考、気質に陥ってしまっているわたしは…

 葵の、そんな言葉に心を震わせ、いや、濡れていた…

「さあ、こっちへ」
 そして葵はわたしの手を取り、リビングへと向かう。

 そして…

 リビングのソファに座り…

 その綺麗な脚を…

 ややブラウン系の艶やかな光沢のストッキング脚を組み…

「違うわよ、悠里はここ、ここに座るんでしょう…」
 と、リビングの床を指差した。

 え、あ、これは…

 あ、あの夜の…

 あの駿をリビングに連れてきた時の…

 再現だ…

「ほら、早く座りなさい」

 だけどわたしは、そんな葵の命令口調の言葉に…

 逆らえない…

 いや、従順な牝イヌとして…

 従ってしまい…

 リビングにひざまずく…





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