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後宮に蝶は舞いて~Everlasting love~第二部
第22章 【夢の途中】(後編)
半ば夢見心地で歩いていた最中、ふっと銀蝶がかき消えた。
「待って」
ー行かないで。私を一人にしないで。
コンとの想い出のよすがでもある銀蝶を呼び止めようとしても、既にあの美しい蝶は影も形も見えなくなっていた。
雪鈴は眼をまたたかせた。
ここは、どこだろう? 後宮の一角には違いないが、見慣れない場所だ。月光に照らし出された前方には、壮麗な殿舎が聳えている。
「ここは、どこ?」
雪鈴が問うともなしに問えば、傍らに控えた尚宮が答えた。
「交泰殿(キョテジョン)にございます」
「交泰殿?」
雪鈴は息を呑んだ。交泰殿は中殿(チュンジョン)、つまり王妃の居所である。現在、陽祖の正妃は既に亡くなって久しく、臣下たちに勧められても王は継妃を迎えていないため、王妃殿は無人であった。今も灯りはついておらず、ひっそりとしている。
「待って」
ー行かないで。私を一人にしないで。
コンとの想い出のよすがでもある銀蝶を呼び止めようとしても、既にあの美しい蝶は影も形も見えなくなっていた。
雪鈴は眼をまたたかせた。
ここは、どこだろう? 後宮の一角には違いないが、見慣れない場所だ。月光に照らし出された前方には、壮麗な殿舎が聳えている。
「ここは、どこ?」
雪鈴が問うともなしに問えば、傍らに控えた尚宮が答えた。
「交泰殿(キョテジョン)にございます」
「交泰殿?」
雪鈴は息を呑んだ。交泰殿は中殿(チュンジョン)、つまり王妃の居所である。現在、陽祖の正妃は既に亡くなって久しく、臣下たちに勧められても王は継妃を迎えていないため、王妃殿は無人であった。今も灯りはついておらず、ひっそりとしている。