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後宮に蝶は舞いて~Everlasting love~第二部
第43章 傷痕
娘はボクスの手前までやってくると、微笑んだ。
「暑いのに、精が出るのね」
この家の令嬢ケトンである。ギルソンはこの一人娘を掌中の玉と可愛がっていた。大抵の者は、では何故、可愛い娘に〝犬の糞(ケトン)〟という馬鹿げた名を付けたのか訝しむ。ケトンは実のところ、仮死状態で生まれたそうだ。ギルソンの夫人はあまりの難産のため生命を落とした。ケトンもまずは助からないだろうと医者も産婆も諦めるようにと言ったが、ギルソンは諦めなかった。
「暑いのに、精が出るのね」
この家の令嬢ケトンである。ギルソンはこの一人娘を掌中の玉と可愛がっていた。大抵の者は、では何故、可愛い娘に〝犬の糞(ケトン)〟という馬鹿げた名を付けたのか訝しむ。ケトンは実のところ、仮死状態で生まれたそうだ。ギルソンの夫人はあまりの難産のため生命を落とした。ケトンもまずは助からないだろうと医者も産婆も諦めるようにと言ったが、ギルソンは諦めなかった。