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後宮に蝶は舞いて~Everlasting love~第二部
第43章 傷痕
 生まれて十六年、初めて〝死〟を意識した瞬間だったのだ。



「大丈夫?」



 若い女が彼の顔を心配そうに見上げている。彼女は震えるボクスの二つの拳を小さな手で包み込み、しきりに撫でていた。



 彼女の手はとてもやわからで、ずっと撫でて欲しいとさえ思った。



 ボクスはようよう頷き、呟いた。



「君が教えてくれたのか」



 ボクスが辻を渡ろうとしたあの時、若い女が〝危ない〟と叫んで危急を知らせてくれた。あのひと声がなければ、ボクスは今頃冗談でなく荷馬車にはねられていたろう。いわば、彼女は生命の恩人だ。
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