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後宮に蝶は舞いて~Everlasting love~第二部
第43章 傷痕
 彼は娘に向き直った。十七、八の綺麗な娘である。透き通った雪肌に黒眼がちの潤んだ大きな瞳が印象的だ。着ているのは明らかに上絹だ。逃げた優男にも匹敵するほどの富豪の令嬢だろう。



「助かりました。失礼でなければ、お礼をさせて下さい」



 美しい娘に見つめられ、ボクスは頭をかいた。



ー何て綺麗な女なんだ。



 あたかも、夏の初めに咲く花のような風情である。そう、強烈な真夏の陽射しの下で開く派手やかな花ではなく、清楚で大人しげな初夏の花が彼女にはふさわしい。




 いつしか娘に見蕩れている我が身に気付き、ボクスは慌てて小さく咳払いした。
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