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背徳のキス
第4章 3話目


その他にもゴタゴタやトラブルが続き、やっと休息が取れるとなったのは、あれから2週間後だった。
不死身のレヴァイアタンの身体は頑丈なので2週間ぶっ通しで酷使しても全然へっちゃらなのだが、精神的な方はてんでダメだ。癒し不足で蓄積された精神的疲労がえぐい事になっている。

“美しい人魚の歌声が恋しくてたまらない。
リュウグウノツカイと戯れたい。
とにかく癒しだ、癒しが必要。”


安らぎを求めて、レヴァイアタンは2週間ぶりの下界の海へと転移した。

レインボー色のリュウグウノツカイを見つけては抱きついたり、音楽鑑賞を楽しんだり、美麗な人魚が描かれた絵画を購入したり。

久しぶりの休暇で存分に羽を伸ばしたレヴァイアタンのストレスは見る見るうちに軽減されていく。


“あー...これで明日からも頑張れる。
でもまだ帰りたくないや。
食い物でも見ていくか。
小腹が空いたし”


レヴァイアタンは目に付いた生鮮市場へと足を踏み入れた。
貝、海藻、ヒトデやウニ等の棘皮動物等、人魚にとっては馴染みのある生鮮食品が売り出されている中、レヴァイアタンは2枚貝の1つであるホタテ貝の前で立ち止まった。


”何だろう、この貝、謎の既視感がある。おかしいな、ホタテ貝なんて食べた事無いんだけどなぁ。どっかで見たか?“


うーんとレヴァイアタンは頭を捻り、忙しかったここ最近2週間の記憶を遡る。


ホタテ..ホタテ.....ホタテ......巾着袋だ。僕はこの貝が描かれた巾着袋をどっかで見た..........何処で見たんだ...?


.....................そうだ、あの音痴マーメイドが持っていた!思い出した!僕の命よりも尊い指輪が保管されていた間違いない!


“エレナ、おかえり”


「うあああああああああ!無理無理無理ィ!
 死ぬ恥ずか死ぬ!!いっそ殺せ!」


レヴァイアタンは、頭を抱えてその場で発狂した。仕事に忙殺される日々送っていた為、すっかり記憶の彼方に消えていた、指輪チュッチュ事件が奇遇な事にホタテ貝によって今再び蘇ってしまったのだった。

買い物客の視線がレヴァイアタン一点に集中する。それを背中で感じ取った彼は、慌てて口元を押さえて深呼吸した。


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