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背徳のキス
第4章 3話目


覚束ない記憶を元に、レヴァイアタンは人魚の宮殿から大きく離れた洞窟を発見する。
見ているだけで陰鬱とした気分が込み上げてくるし、暗所恐怖症なら確実に恐怖を覚えそうな、真っ暗な入り口が見えた。


“多分ここがあのマーメイドの住処だ。
違ってたら恥ずかしいけど。”


初見の際は、シェリーの稚拙な歌声に気を取られて、無遠慮に洞窟内を覗き込んだレヴァイアタンだが、今は違うらしい。


「こ、こんにちは...。」


流石に一人暮らしと思われるマーメイドのお宅に無断で入るのは躊躇われたのか、自信なさげに挨拶をした。
が、返事が返ってこない。
再度ぎこちなく挨拶をするも、やはり返答は無い。


“留守か?....いや、居るな...“


レヴァイアタンは自身に背を向けて何やら熱心に作業に取り掛かっているシェリーを発見した。


”何してるんだろう....中に入って確認してみるか?挨拶は一応したし、いいよね?”


何も良い事は無いのだが、謎の結論に至った
レヴァイアタンは、物音を立てずに洞窟内へと侵入する。


暗い洞窟内を数匹のクシクラゲ達が漂う。体の表面にある繊毛を動かして泳ぐ彼らは、毒針が無く無色透明で光の加減によっては七色に輝くのだ。


気配を消して近付いた先に、彼女は居た。
照明と思われる琥珀色に光るランプを横に置き、今にも壊れそうなスツールに腰掛け、筆ペンを片手に、壁に立てかけたスケッチブック型のケント紙に絵を描いていたのだ。


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