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背徳のキス
第4章 3話目
「....何したんです?」
眩い光を放ち、パウチ加工されたようにツルツルになったケント紙を指差しながら、シェリーはレヴァイアタンに尋ねた。
「何って保護魔法だけど?」
「........あの...人魚って魔法使えない筈なんですけど...どうやったんですか?」
シェリーの指摘に、レヴァイアタンの胸中は焦りと「ヤベエ、やらかした」の一言で埋め尽くされていく。
「あー.....僕は新種の人魚だからさ、使えるんだよ。」
「新種の人魚?」
「そうそう。見た目は従来の人魚と変わりないけど、肉体を構成する成分が全然違うんだ。それで超能力みたいな魔法使えたりする。」
即席で作った嘘は、あまりにもお粗末だった。
「新種の人魚って何だよ」とレヴァイアタンも自分自身にツッコミを入れたくなったが、状況的にはこの嘘を突き通すしかなさそうだ。
「そう...なんですね....私、この洞窟に引きこもっているので、よく分からなくて....人魚の宮殿には居るんでしょうか?」
「うん....まあ、居るんじゃないかな。少ないと思うけど。あーそうだ、ホタテ食べない?市場で買ってきたんだ。」
これ以上作り話でしかない“新種の人魚”の話題に触れてほしくなかったレヴァイアタンは、何の脈絡も無くホタテの話を振った。
「...いいですけど...どうしてホタテなんて買ってきたんです?」
「ほら前、君に指輪拾ってもらっただろ?その時、ロクにお礼も出来なかったからさ。ホタテ嫌いだったりする?」
「好物です。ありがとうございます。貴方って律儀なんですね。」
突拍子も無い話題転換に戸惑っていた様子のシェリーだったが、今は満面の笑みだ。
強引ではあるが、何とか話題を逸らす事に成功したレヴァイアタンは、ホッと息を撫で下ろした。そして背後に隠していたホタテ貝がぎっしり入った網袋をシェリーの目の前にドンと置いた。サンタクロースが肩に担ぐ、白いプレゼント袋みたいな雰囲気をどことなく漂わせている。