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ありがちな、ただの恋
第1章 ありがちな、ただの恋
 カラオケルームへ戻り、口を開けて眠っている響花を起こす。そして親友の彼女と僕と三人で先に帰ると告げた。仲間たちは少し変な顔をしたけれど構うものか。

 響花はふらついて一人で立てない。かなり酔いが回っているようだ。親友から、僕が響花を家まで送ってくれることをおとなしく聞いていた。

 カラオケボックスを後にし、駅まで響花を支えながら三人で歩く。

「わたし、酔っ払っちゃて。ごめんね迷惑かけて」

 ろれつの回らない声で謝ってくる。少しは酔いが覚めてきたようだ。

「いいのよ。彼がちゃんと送ってくれるからね」
「ありがとうー。なんか楽しいね」
「はいはい。しっかり歩いて!寝ちゃダメよ」
「うん。頑張る」

 響花が僕を見た。真剣な目をしている。そして「わたしね。振られちゃった」と、大したことじゃないような軽い口調で言った。

 響花の肩を支える腕に彼女の体温が伝わってくる。響花ってこんなに軽かったんだと僕は思った。

「わたし、振られちゃったの」

 彼女がまた言った。僕は「ひどい男だね」と答える。すると響花の足が止まった。ポツッと、

「男ってひどいよね」

 つぶやくように。まるでひとりごとのように。

「すべての男がひどいわけじゃないよ」と僕。そしてまた歩き出す。響花はしばらく黙っていた。しかし、

「きみは違うの?」
「僕は違う」
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