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ありがちな、ただの恋
第1章 ありがちな、ただの恋
 即答した僕へさらに、

「どう違うの」
「…え」
「わたし、きみが好きだよ」
「…」
「わたしのこと、好きにしていいのよ」

 グニャグニャしている響花を支える腕に力を入れたら、必然的にお互いの体がくっついた。

 温かい。その重さと温もりには、確かに今ここに響花という一人の女がいるんだという実感があった。男として当然の欲望を押し退け、響花への愛おしさがこみ上げてくる。

 "この女を守るんだ"

 なぜか急に僕は、心の中で固く誓った。だから、

「セックスしようか。このままホテルへ行って…あっ!わたしの部屋でする?」

 などと誘惑されても、普段の僕ならば喜んで靡いてしまうところを、

「そんなこと言っちゃだめだよ」

 優しい気持ちでたしなめた。しかし響花には僕のそんな気持ちは伝わっていない。むきになって"セックス"という単語を乱発する。

「何でよ!わたしとセックスしたくないの?」
「もっと自分を大切にしようよ」
「なによ偉そうに。どうせ男なんか女の体が欲しいだけのサイテイな生き物な…」
「僕は君が好きだ」
「え…」
「僕はサイテーな生き物だけど、君のことが大好きだよ」
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